2011/02/20

解析概論の著作権

1月10日に岩波書店に問い合せた解析概論の著作権に関する回答を2月17日に取締役編集局部長名でいただきました。質問の際に回答内容も公開させていただきたいと考えておりますと書いていましたが、念のために確認したところ、全文を転載してよいと許諾をいただきましたので、宛名や差出人を除いた全文を公開します。

 1月10日付のメールでごお問い合わせいただいた高木貞治著『解析概論』の著作権に関し、ご返事申し上げます。
まず、『定本』と『改訂第三版』の関係は、ご指摘いただいた通りです。『定本』で新たに加えられた補遺「いたるところ微分不可能な連続函数について」以外は基本的に同じ内容になっています。
 しかしながら、ご留意いただきたいのは、『改訂第三版』の著作権がどうなっているのかということでございます。
 『改訂第三版』は、黒田成勝先生によって改訂が行われました。黒田成勝先生の「序文」の記述にもとづいて、『改訂第三版』と『増訂版(増訂第二版)』(昭和18年5月)とを比較していただければおわかりいただけますように、『改訂第三版』では、黒田成勝先生によって、さまざまな補足や挿入や変更が行われています。それらのなかには、単なる表記等の変更ではなく、創作性のある加筆、改変になっている箇所が多々ございます。したがって、『改訂第三版』には改訂者である黒田成勝先生の著作権が存在しています。
 念のため申し上げますと、『増訂版(増訂第二版)』の改訂は高木貞治先生ご自身によってなされていますので、そのような事情は存在しません。
 『解析概論』の著作権に関しましては、以上のような事情になっておりますので、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。

つまり、「改訂第三版は、増訂第二版を改訂(翻案)したもので、その著者は黒田成勝先生である。改訂第三版の序文には改訂者として氏名を表記しているが、書籍には原著作者である高木貞治先生の氏名だけ表示して改訂者の氏名表示はしていない。」との解釈であると理解しました。

黒田成勝先生が亡くなられたのは1972年ですので、著作権の保護期間が切れるのは2023年ということになります。そうなるとWikisourceで公開するのは著作権侵害ということになります。Wikisourceでの入力もほぼ完成している状況でこのような結果になったことは非常に残念です。

今後の対応は、
  1. Wikisourceからいったん削除して、2023年に公開する
  2. 増訂版(増訂第二版)を定本として再入力して、利用しやすい現代仮名づかいへの変更はWikibooks上で行う
  3. 著作権者である岩波書店?(定本の奥付には © 高木滋 と記されている)にGFDLにしてもらう
の三つが考えられますが、3.に関しては難しいと思われます。

私自身は最初の目次とほんのわずかな本文しか入力していませんが、精力的に高木貞治プロジェクトに関わってくださっている他の多くの方の努力が報われないことのないようにしなければならないと思っています。

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